
戸建て住宅は、一定期間ごとの屋根メンテナンスが欠かせません。
ただ、屋根自体が傷んでいる場合は、塗装だけでは建物を守りきれないこともあります。
そんなときに選択肢となるのが「重ね葺き(カバー工法)」です。既存の屋根を撤去せずに新しい屋根材を重ねる方法で、コストを抑えつつ耐久性を高めることができます。
この記事では、屋根のカバー工法(重ね葺き)の概要や費用、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。屋根改修を正しく行うことで、住宅全体の寿命を延ばし、メンテナンス性を向上させることができます。ぜひ参考にしてください。
屋根のカバー工法とは

屋根の代表的な施工方法は、大きく分けると**「塗り替え」、「葺き替え」、「カバー工法(重ね葺き)」**の3つです。
それぞれ特徴や費用が異なるため、屋根の劣化状態に合わせて最適な施工方法を選ぶことが重要です。
1. 塗り替え
塗り替えは屋根メンテナンスの基本的な施工です。
まず屋根を高圧洗浄できれいにした後、屋根専用の塗料で塗装します。
多くの住宅では7〜10年を目安に行われ、雨や紫外線から建物を守り、サビや腐食などによる劣化を防ぎます。
塗料の種類によってメンテナンスサイクルは変わりますが、屋根の耐久性を維持するために定期的な塗り替えが必要です。
2. 葺き替え
葺き替えは、既存の屋根材・防水シート・野地板(下地の木材)をすべて撤去して、新しく張り替える工事です。
弱った下地の補強や交換ができ、屋根全体の防水性や性能を改善できます。
ただし、撤去費や処分費がかかり、工期も長く、費用が高くなる場合があります。
3. カバー工法(重ね葺き)
カバー工法は、古い屋根材を残したまま防水シートを貼り、新しい屋根材を重ねる工事です。
古い屋根を剥がさないため、撤去費用や廃材処理費用がかからず、工期も短く費用も抑えやすいのが特徴です。
特に2004年以前のスレート屋根には、人体に悪影響を及ぼす**アスベスト(石綿)**が含まれている可能性があります。
葺き替えだと処分費用が高額になることがありますが、カバー工法なら解体作業が不要のため、リスクと費用を回避できます。
さらに、二重屋根になることで断熱性や防音性が向上し、外観も新しくできます。
近年では、コスト・工期・性能面のバランスから、人気の高い施工方法となっています。
工事の流れ
棟板金の撤去

棟板金とその下にある貫板を撤去します。雪止めが配置されている場合は撤去し清掃を行います。屋根カバー工法は廃材はこの部分だけなので廃材処分費が抑えられます。
防水工事

既存の屋根の上に防水紙を貼り付けます。軒先から棟に向かって敷いていきます。その時上下の防水紙を重ね合わせることにより屋根材の下に水分が入り込むのを防ぎます。
屋根材を敷説

一枚一枚、屋根の形状に合わせて敷設します。最初に谷棟、隅棟を取り付けていきます。その後、軒先から平らな部分を取り付けていきます。
貫板・棟板金の設置

屋根材の設置後、貫板を設置します。腐食しにくいプラスチック樹脂製の貫板を設置し棟板金の設置を行います。棟の形状に合わせて貫板の上に棟板金を被せ、ビスを使って固定させていきます。特に棟板金は風の影響を受けやすいので、飛散しないようにしっかりと固定します。
カバー工法が必要なタイミング

屋根にも耐用年数があります。屋根材の耐用年数を超えたら、葺き替えやカバー工事を検討することが大切です。
屋根のメンテナンス時期は、屋根材の耐用年数によっても違います。
| 屋根材 | 耐久年数 |
|---|---|
スレート ![]() | 20〜30年程度 |
トタン ![]() | 15年 ~20年程度 |
ガルバリウム ![]() | 25年~30年程度 |
日本瓦 ![]() | 50年~100年程度 |
アスファルトシングル ![]() | 10年~20年 |
- 経年劣化で屋根が寿命を迎えた
- 部分補修では対応ができない破損
- 屋根の下地にはまだ劣化が及んでいない
経年劣化によって、部分補修できない範囲で屋根が寿命を迎えた場合は、カバー工法が有効です。ただし、屋根の内部までは交換しないため下地の劣化が進んでいないことが前提となります。
カバー工法のメリットデメリット
メリット
**カバー工法(重ね張り)**は、葺き替え工事のように既存の屋根材を剥がす必要がありません。
そのため、工期を短縮し、費用を抑えながら屋根や外壁を新しくできるのが特徴です。
既存の屋根や外壁を覆う形で施工するため、劣化部分をしっかり隠しつつ、デザインや色を一新できます。
さらに、使用する外壁材によっては断熱性や防音性が向上し、耐久年数も約20年前後と長持ちします。
工事期間の目安は、葺き替えが約14日〜1か月に対し、カバー工法はおおよそ10日〜半月程度。
その間も普段どおりの生活が可能です。
また、既存の屋根を撤去しないため廃材がほとんど出ず、撤去費用や処分費が不要です。
特にアスベストを含む屋根材の場合でも、取り除く必要がないため、高額な処分費や飛散リスクを回避できる点も大きなメリットです。

屋根が二重になるので断熱性・防音性・防水性が向上する
葺き替えに比べて施工費用が抑えられる
葺き替えに比べ工期が短い
騒音やホコリのトラブルが少ない
古い建材に含まれるアスベストを処理する必要がない
既存の屋根にかぶせる工法なので工事中も雨漏りしにくい
デメリット
カバー工法のデメリットは、塗装も同じですが、内部を触る工事ではありませんので、根本的な改修はできません。そして、安価と言っても塗装工事よりは高価であり、下地が傷んでいる屋根には施工できません。(下地が傷んでいる場合は葺き替えが必要です)また、屋根自体の形状によってはカバー工法が向かない場合もあります。

カバー工法ができない屋根がある
一般的なお住まいの屋根の場合、金属やスレートはカバー工法に向いていますが、日本瓦の屋根はカバー工法には不向きです。波型の形状の屋根や、厚みがある屋根材の上には、固定することが難しいためです。また、太陽光発電の設置も難しくなります。瓦屋根も、ソーラーパネルが付いている屋根も施工できないことはないのですが、他の工事で対応した方が費用やメンテナンスの面ではお得ということがあります。
内部の補修が必要な屋根には施工できない
屋根の下地や内部が劣化しているときは、その上から新しい屋根をかぶせるだけでは危険です。その部分を補修しなければなりません。補修せずにカバー工法を行ってしまうと、雨水などを吸収して腐食していく可能性があるため、新しい屋根材を固定する際に釘を打つことができません。そのような場合には葺き替え工事を行うことになります。
屋根が若干重くなる
カバー工法は屋根が二重になる分、屋根の総重量が増えるため耐震性能が少々低下します。
とは言え、戸建て住宅に多いスレート屋根に、軽量な金属屋根材でカバー工法を行った時の総重量は、約23~26kg/㎡程度です。
昔ながらの住宅で見られる瓦屋根(約60kg/㎡)と比べても、カバー工法で施工した屋根のほうが軽いのです。
カバー工法は大多数の住宅は問題がないと考えられています。
新たに取り付ける屋根材が限られる
屋根が重くなるのを避けるために、新しく取り付ける屋根材は「金属素材」が中心となります。
カバー工法にかかる費用

カバー工法は、葺き替えよりは安価とはいっても、塗装費用の約4倍~5倍の費用が掛かります。
屋根の大きさ、形状、状態によって変動しますが、最終的には合計で60~250万円程度と考えておくとよいでしょう。葺き替えよりは約10~20万円安くなると考えられます。
カバー工法がお勧め出来る場合、出来ない場合

費用の安さを重視する
屋根工事をする必要があるが葺き替えができるほど予算がない場合や、工事費用の安さを最重要視する方には、カバー工法が最適です。
アスベストの除去作業をまだやりたくないとき
今の屋根材にアスベストが含まれていて割り増し撤去費用が支払えない場合も、撤去費用自体がないカバー工法が最適となります。
断熱性や遮音性を高めたいとき
現在のお住まいにこれから先、何年住むか
10~15年以内に住まなくなる予定の建物であれば、それまでに再度メンテナンスをする可能性は低いでしょう。
住まなくなるまでの残りの期間だけ家がもてばいいのであれば、カバー工法を選ぶのも合理的です。
まとめ

屋根のメンテナンスは、基本的には塗装で十分な場合が多いです。ただし、今までメンテナンスをしないまま築30年を超えている建物に関しましては、カバー工法や葺き替えをお勧めします。塗装では補修しきれない場合があるからです。
カバー工法は、屋根の葺き替えに比べると費用を抑えることができます。とは言え、高額なメンテナンスであることに変わりはありません。
本当に必要なケースでのみ、カバー工法を検討するべきでしょう。注意が必要なのは、塗装で十分な建物でも、強引に「カバーや張り替え工法ではないと補修できない!」と偽る業者です。
「カバー工法を提案されたけど、本当に適した補修方法なの?」
など、ご自身で判断が難しい場合は、経験が豊富で信頼のおける塗装業者に、現地調査を依頼することをお勧めします。
優良な塗装業者なら、本当に必要なメンテナンスを提案してくれることでしょう。
横須賀市、横浜市、三浦市、逗子市、葉山町周辺の方でお住まいで屋根のメンテナンスが気になりましたら、是非私たち、昌栄にお問い合わせください。プロの目で建物を調査し、最も適した補修方法を提案させていただきます。





